ノウハウ

NPS の計算方法 — 推奨者と批判者から算出する 5 ステップ

NPS(ネットプロモータースコア)の計算方法を 5 ステップで解説。結論は「推奨者の割合 − 批判者の割合」。0〜10 点の 11 段階設問の作り方、推奨者・中立者・批判者の 3 分類、Excel での集計、スコアの読み方、そして計算でつまずく典型ミスまで、実務目線で整理する。NPS の読み方やベンチマークの詳細は専門記事へ誘導する。

結論から言うと、NPS は「推奨者の割合(%)− 批判者の割合(%)」で計算します。 平均点ではありません。ここを勘違いして「10 点満点で平均 8.2 点」のような出し方をすると、それは NPS ではなく、ただの平均満足度になってしまいます。

NPS(ネットプロモータースコア)は、Reichheld (2003) が提唱した、顧客ロイヤルティを 1 つの数字で表す指標です。計算自体はシンプルですが、設問の作り方・3 分類の境界・割合の取り方 でつまずく人が後を絶ちません。本稿では、NPS を正しく算出する 5 ステップ を、各ステップの「ここで失敗する人が多い」注意点とあわせて解説します。指標としての読み方やベンチマークは NPS の読み方とベンチマーク に譲り、ここでは「どう計算するか」に集中します。

Step 1: 0〜10 点の 11 段階で聞く

NPS の計算は、正しい設問 から始まります。決まった形式があります。

「この商品/サービスを、友人や同僚にどの程度すすめたいと思いますか?」 0(まったくすすめたくない)〜 10(非常にすすめたい)の 11 段階

この 0 から 10 までの 11 段階 が NPS の絶対条件です。5 段階や 7 段階で聞いたものは、NPS としては計算できません。

ここで失敗する人が多い: 5 段階尺度で聞いて NPS を出そうとすること。NPS は 0〜10 の 11 段階を前提に 3 分類の境界が決まっているので、段階数を変えると別の指標になります。リッカート尺度との違いは リッカート尺度の設計ガイド も参照。設問は 1 問で十分ですが、直後に「その理由」を自由記述で聞くと改善のヒントが得られます。

Step 2: 回答を推奨者・中立者・批判者の 3 つに分類する

集まった回答を、点数に応じて 3 グループに分けます。この境界は固定 です。

  • 推奨者(Promoters): 9〜10 点。熱心なファン。継続・紹介してくれる層
  • 中立者(Passives): 7〜8 点。満足はしているが、熱量は低い。競合に流れやすい
  • 批判者(Detractors): 0〜6 点。不満を持つ層。悪い口コミの源にもなる

ここで失敗する人が多い: 中立者(7〜8 点)の扱いを間違えること。7 点と 8 点は「推奨者」ではありません。「8 点もつけてくれたのだから推奨者だろう」と含めてしまうと、NPS が実態より高く出ます。0〜6 がすべて批判者である点も見落としがちです(6 点は「まあまあ良い」ではなく批判者)。この境界は Reichheld が顧客行動との相関から定めたもので、勝手に動かさない のが鉄則です。

Step 3: それぞれの「割合(%)」を出す

3 分類できたら、全体に占めるそれぞれの割合 を計算します。

  • 推奨者の割合(%)= 推奨者の人数 ÷ 全回答者数 × 100
  • 批判者の割合(%)= 批判者の人数 ÷ 全回答者数 × 100

例: 全回答 200 人のうち、推奨者 90 人・中立者 70 人・批判者 40 人なら

  • 推奨者 = 90 ÷ 200 × 100 = 45%
  • 批判者 = 40 ÷ 200 × 100 = 20%

ここで失敗する人が多い: 分母を間違えること。割合の分母は 必ず全回答者数(中立者を含む全員)です。「推奨者 ÷(推奨者+批判者)」のように中立者を除いて計算すると、数値が大きく狂います。中立者は計算式に直接は登場しませんが、分母にはしっかり含まれている ことを忘れないでください。

Step 4: NPS = 推奨者% − 批判者%

いよいよ算出です。推奨者の割合から批判者の割合を引く だけです。

NPS=推奨者の割合(%)批判者の割合(%)\text{NPS} = \text{推奨者の割合(%)} - \text{批判者の割合(%)}

先ほどの例なら:

NPS=4520=25\text{NPS} = 45 - 20 = 25

NPS は −100 〜 +100 の範囲を取ります(全員が推奨者なら +100、全員が批判者なら −100)。単位は付けず、「NPS は 25」のように整数で表します。

ここで失敗する人が多い: 「%」を付けて「NPS は 25%」と書くこと。NPS は割合の引き算ですが、結果自体は%ではなくスコア(ポイント)として扱うのが慣例です。「25 ポイント」または単に「25」と表記します。

Excel での計算

実務では Excel / スプレッドシートで一気に出せます。回答が縦に並んだ列(仮に B 列)があるとして:

  • 推奨者数: =COUNTIFS(B:B,">=9")
  • 批判者数: =COUNTIF(B:B,"<=6")
  • 全回答数: =COUNT(B:B)
  • NPS: =(推奨者数 - 批判者数) / 全回答数 * 100

推奨者から批判者を引いた数を全回答数で割って 100 を掛ければ、一発で NPS が出ます。CSV を取り込んでからの集計手順は アンケート Excel 集計ガイド で詳しく扱っています。

Step 5: スコアを読む — ただし単独で判断しない

計算した NPS をどう読むか。絶対値だけで一喜一憂しない のが実務の作法です。

  • NPS は業界・国・文化で水準が大きく違う。「25 は良いのか」は単独では言えない
  • 日本の回答者は中央値に寄りやすく、欧米より低く出る傾向がある
  • 大事なのは 絶対値より、時系列の変化と、同業との相対比較

ここで失敗する人が多い: 1 回計測した NPS の絶対値だけを見て「良い/悪い」を判断すること。NPS の価値は 継続計測による変化の把握 にあります。また、Dawes (2024) のように、NPS の計算方法自体(中立者を捨てる構造など)への学術的な批判もあります。スコアの正しい読み方・ベンチマーク・限界は NPS の読み方とベンチマーク で詳しく整理しているので、計算できたら必ず併読してください。

編集部の視点 — NPS 計算で本当に効く 3 点

業界事例と実務担当者の声を継続的に追っている立場から、NPS の計算で必ず効く 3 点。

1. 「平均点」と「NPS」を絶対に混同しない

最頻出の事故です。「10 点満点で平均 8 点だから NPS 80」は 完全な誤り。NPS は平均点ではなく、推奨者割合から批判者割合を引いたものです。経営会議で「平均点」を「NPS」と称して報告すると、他社比較もベンチマークも全部ズレます。この 1 点だけは絶対に外さない。

2. N(回答数)を必ず併記する

NPS は割合の引き算なので、N が小さいと激しく振れます。N=20 で「NPS 30」と言っても、数人の回答で簡単に ±20 動く。「NPS 30(N=20)」のように 必ず回答数を併記 し、N が小さいスコアは参考値と割り切る。必要サンプル数の考え方は 必要サンプルサイズの決め方 で。

3. スコアより「理由の自由記述」を集計する

NPS の数字そのものより、「なぜその点数か」の自由記述 のほうが改善に直結します。批判者が何に不満で、推奨者が何を評価しているか。点数を出して終わりにせず、理由をセットで集める設計にする。自由記述の設計は 自由記述設問の設計ガイド を参照。

まとめ — NPS 計算の 5 ステップ

  1. 0〜10 点の 11 段階で聞く — 5 段階・7 段階では NPS にならない
  2. 3 分類する — 推奨者 9〜10/中立者 7〜8/批判者 0〜6。境界は動かさない
  3. 割合を出す — 分母は必ず全回答者数(中立者も分母に含む)
  4. 推奨者% − 批判者% — 結果は%でなくスコア。−100〜+100
  5. 時系列・相対で読む — 絶対値だけで判断しない。専門記事で読み方を確認

NPS の計算は「推奨者% − 批判者%」さえ押さえれば難しくありません。 つまずくのは決まって、平均点との混同・3 分類の境界・分母の取り違えの 3 つ。ここさえ外さなければ、誰でも正しく算出できます。計算できたら、次はスコアの読み方とベンチマークへ進みましょう。


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参考文献 (2件)

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