ノウハウ

アンケートの設問数は何問が適切か — 離脱を防ぐ長さの決め方

アンケートの設問数は何問が適切か。結論は「5分・15問前後」を目安に、目的から逆算して削ること。設問数が増えると回答率と回答品質が落ちる理由、適切な長さを決める5ステップ、離脱を防ぐ削り方を、Galesic & Bosnjak (2009) などの研究と実務の勘所で解説する。

結論から言うと、Web アンケートは「回答時間5分・設問数15問前後」を上限の目安にし、そこから目的に直結しない設問を削るのが正解です。 理由はシンプルで、設問数が増えるほど回答率も回答の質も落ちるから。「せっかくだから全部聞こう」が、データを台無しにする最大の原因です。

とはいえ「15問」はあくまで出発点で、最適な数は調査の目的・回答者の動機・配信チャネルで変わります。本稿では、自分のアンケートの設問数を決める5ステップ を、各ステップの「ここで失敗する人が多い」注意点とあわせて解説します。

なぜ設問数が増えると失敗するのか

設問数と回答率・品質の関係は、複数の研究で繰り返し示されています。Galesic & Bosnjak (2009) の Web 調査実験では、提示されたアンケートが長いほど開始率・完了率が下がり、後半の設問ほど回答が雑になる(回答時間が短くなり、選択肢の中身を読まなくなる)ことが確認されています。

起きる問題は2つです。

  • 量の問題(離脱): 長いと最後まで答えてもらえない。途中離脱が増え、回収数が減る
  • 質の問題(手抜き): 後半になるほど「とりあえず真ん中」「全部同じ選択肢」というストレートライン回答が増える

つまり設問を増やすほど、集まるデータは「少なく・粗く」なる。これが「全部聞こう」が裏目に出る仕組みです。では何問にすべきか——5ステップで決めます。

Step 1: 調査の「意思決定」から逆算する

設問数を決める前に、「この調査の結果で、何を決めるのか」 を1文で書きます。設問は、その意思決定に必要なものだけを残す。

  • ❌ 「顧客のことを幅広く知りたい」→ 際限なく設問が増える
  • ⭕ 「次回の新機能を A 案 / B 案どちらにするか決める」→ 必要な設問が絞れる

ここで失敗する人が多い: 目的が「知りたい」止まりだと、設問が無限に増えます。「あったら面白い」設問を全部入れてしまう。「この設問の答えで、行動が変わるか?」 を1問ずつに問い、変わらない設問は削る。これだけで多くのアンケートは半分の長さになります。

Step 2: 設問を「必須・任意・不要」に仕分ける

洗い出した設問候補を3つに分けます。

  • 必須: Step 1 の意思決定に直接使う設問
  • 任意: あると分析が深まるが、なくても意思決定はできる設問
  • 不要: 「念のため」「いつか使うかも」の設問 → 削る

必須だけで構成し、回答時間に余裕があれば任意を少し足す。この順番を守ります。

ここで失敗する人が多い: 属性設問(年齢・性別・職業……)を反射的に大量に入れること。クロス集計で使わない属性は分析を複雑にするだけです。実際にクロス集計する軸だけ に絞る。属性の入れすぎは離脱の典型原因です。

Step 3: 回答時間で上限を引く(5分・15問の目安)

設問数は「問数」より 「回答時間」 で考えるほうが正確です。設問タイプで所要時間が大きく違うからです。

  • 単一回答(SA): 1問あたり約 10〜15 秒
  • 自由記述: 1問あたり約 30〜60 秒(負担大)
  • マトリクス設問: 1グリッドで複数問ぶんの負担

目安として、回答時間5分・単純な設問換算で15問前後 を上限に設計します。これを超えるなら、Step 2 に戻って削るか、調査を分割します。

ここで失敗する人が多い: マトリクス設問を「1問」と数えること。5項目×7段階のマトリクスは、体感では5問ぶんの負担です。マトリクスの多用は認知負荷とストレートライン回答を招きます。詳しくは マトリクス設問の設計と落とし穴 で。

Step 4: 配信チャネルとデバイスで調整する

同じ15問でも、誰に・どこで答えてもらうか で適切な長さは変わります。

  • スマホ回答が中心 → さらに短く。スクロールと小さい画面で離脱が早い
  • モニター調査(謝礼あり・回答に慣れた層) → やや長くても完走されやすい
  • 自社顧客への依頼(動機が高い) → 中程度まで許容される
  • 冷たいリスト・初接触 → 極力短く

Deutskens et al. (2004) は、回答者の動機や謝礼の設計が回答率・品質に影響することを実験的に示しています。「誰に聞くか」を無視した一律の長さ設定は危険 です。

ここで失敗する人が多い: PC で設計して問題ないと判断し、スマホでの見え方・長さ感を確認しないこと。今やアンケート回答の多くがスマホです。スマホ前提の長さに調整しましょう。詳しくは モバイルアンケート設計ガイド で。

Step 5: 体感の長さを「導入文・進捗・分岐」で縮める

実際の設問数を減らせないときは、「長い」という体感を減らす 工夫が効きます。

  • 導入文で所要時間を明示: 「約3分・10問」と先に伝えると、心の準備ができ離脱が減る
  • 進捗バーを表示: 「あと少し」が見えると完走率が上がる
  • 分岐ロジックで出し分け: 全員に全問見せず、該当者にだけ関連設問を出す。これで「自分に関係ない設問」の体感負担を消せる

ここで失敗する人が多い: 全員に全設問を見せること。分岐を使えば、1人あたりの体感設問数を大きく減らせます。導入文の書き方は アンケート導入文・お礼文の書き方ガイド、分岐の設計は アンケートの分岐ロジック完全ガイド で。

編集部の視点 — 設問数で本当に効く3点

業界事例と実務担当者の声を継続的に追っている立場から、設問数で必ず効く3点。

1. 「念のため設問」を1つ削るたびに回収数が増える

設問を1つ削る判断は、回収数を1つ増やす判断とほぼ同義 です。「念のため」「いつか使うかも」で足した設問は、ほぼ確実に使われないまま離脱だけを増やします。削る勇気が、結果的にデータ量を増やします。

2. 長くせざるを得ないなら、重要な設問を前に置く

研究でも示されるとおり、後半の設問ほど回答品質が落ちます。どうしても長くなるなら、意思決定に最も重要な設問を前半に 配置する。離脱されても主要データは確保できます。ただし設問順は回答を歪めることもあるので 順序効果と設問順設計 の注意も併読を。

3. 「短くて回答率が高い」ほうが、たいてい価値が高い

「たくさん聞いて回収率20%」より「絞って回収率60%」のほうが、サンプルの偏りが小さく意思決定に使えるデータになります。設問数を増やして得た情報は、回答率低下による偏り(答えてくれた人だけのデータ) で相殺されがちです。長さと回収率はトレードオフだと自覚して設計しましょう。回答率そのものを上げる工夫は アンケートの回答率を上げる10の実践テクニック で。

まとめ — 設問数の決め方5ステップ

  1. 意思決定から逆算 — 「結果で何を決めるか」を1文で。行動が変わらない設問は削る
  2. 必須・任意・不要に仕分け — 「念のため」は不要。属性はクロス集計する軸だけ
  3. 回答時間で上限 — 5分・15問前後を目安に。超えたら削るか分割
  4. チャネル・デバイスで調整 — スマホ中心ならさらに短く。動機の高低で許容量が変わる
  5. 体感を縮める — 所要時間明示・進捗バー・分岐ロジックで「長い」感覚を減らす

設問数の正解は「目的を達成できる最小の数」 です。多く聞くほど良いデータが取れるわけではなく、むしろ逆。削る判断こそが、回収数と回答品質を守ります。


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参考文献 (2件)

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